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前略、大坂は暑いです

文:W.KOHICHI





「今日は暑いね……秀吉……」
「うむ」
「こう暑いと兵の士気にも影響が出るね……」
「半兵衛、貴様は少し休むべきだ」
「なに、このくらいの暑さ、どうという事はないさ……」
「明らかにどうという事では済んでいないぞ。休め」
「そんなに顔色が悪いかい……?」
「普段より紅いな」
「じゃあ、いいじゃないか……」
「いいや半兵衛、貴様の顔色が紅いというのは気持ちが良くない」
「酷い言い種だね……僕には自然の理すら許されないと言うのかい、秀吉……?」
「そんな事は言わないが、人にはあるべきようというものがある」
「それはつまり……」
「貴様のあるべきようというのが、いつもの白い顔色だと言う事だ」
「そうか……それじゃあしょうがないね……」
「取り敢えず、その仮面を外してみてはどうだ」
「それは出来ないね……これは既に僕の顔の一部だから……」
「その仮面、いつもとは少し違うようだが?」
「………。……あ」
「どうした」
「これ……佳人薄命の仮面(※1)だ……」
「休んでこい、半兵衛。貴様は参っている」
「大丈夫だ、これくらいわけもない……」
「軍師たる貴様がその様では、兵の士気も上がらぬと言うものだ」
「ちょっと暑いだけでそんな弱音は吐けないさ……」
「確かに大坂は暑いが、他所もそうだとは限らぬ。合戦になった時に困る」
「僕は常に戦場に心を置いているよ……君の足枷にはならないさ……」
「では問うが、腰の左に付けたそれはなんだ?」
「これは僕の武器の凛刀……あれ……?」
「うむ。どう見ても万国旗にしか見えないのだがな」
「これはしまった……万国の象徴(※2)じゃないか……」
「何度も言わせるな、半兵衛。休め」
「そうだね……今日の僕はちょっぴり迂闊なようだ……」
「うむ」
「ただ……一つ言わせてもらって良いかい、秀吉……?」
「言ってみよ」
「卓の下に置いてある水の入った盥……それに足をつけてるの、兵には見られないようにね……」
「………」
「………」
「……うむ。我も休もう」
「それがいいね……」

<終>



※1
竹中半兵衛専用装備。
体力を徐々に失う代わりにそのステージでの小判の入手量が増える。

※2
竹中半兵衛第7武器。
国際派がこよなく愛した万国旗。クリティカルヒットが高確率で発生する。


後書き
 皆様いかがお過ごしでしょうか、7月も半ばを過ぎめっきり暑くなりました。
 暑いとダウナーになりますよね、いろんな意味で。今一つ気合いの入ってない物語ですが、この気合いの抜けっぷりを皆様に感じていただければ幸いです。
 それにしたって暑いっていうか、こんな暑さの時には幸村とお館さまはどう過ごすのかという話も面白そう……いや、いつもと同じか、あの2人なら。


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