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「って、私一人だけが痛い目見てるし!」 〜 船頭多くして呉越同舟は山に登る 〜

文:W.KOHICHI




「これよりギルド“プロキオン”12メンバー円卓会議を始める! 私が議長よ! フハハハ!」
「うーい議長。しつもーん」
「はいミッシェルくん! 発言を許可するわ」
「なんの会議なのこれ?」
「察しろよ」
「エルキュールくん、発言は挙手してからなさい。で、質問の答えですけれど」
「はい、質問」
「話の腰を折らないのクローディア! もといクローディアくん!」
「なんでわざわざくん付けするのかしら」
「議長に聞いたら?」
「そこの2人、発言時は挙手する!」
「私の質問いいかしら、議長」
「ああ、遅くなって悪いわねクローディアくん。どうぞ」
「んじゃ議長、なんの会議かっていう以前にどうして会議なんて開いているのかしらね。それが分かれば私たち、返り血にまみれた殺人鬼に負けないくらいには幸せになれるんだけど」
「怖いわよクローディア!」
「んー、良い質問と形容ねクローディアくん。それとフランドールくん。発言は挙手してしなさい」
「そこがポイントなの!? っていうか別に良い質問でも形容でもないし!」
「フランドールくん。発言時は挙手する」
「ひぃ! シールドスマイトの体勢で凄まないで! なんなのこの会議!?」
「そうそう、俺の質問にまだ答えてないぞ議長ー」
「ああ……そこは詫びるわミッシェルくん。これはクローディアくんの質問とも関連しているから良くお聞きなさい」
「いや、良く聞くからシールドスマイトの体勢解除して! お願い議長!」
「貴方も冒険者なら行動キャンセルなんてない事は分かってるでしょうに……」
「ひぃぃ! そんなのってありなの!? 助けてパラディン……ってこの人がパラディンだー!」
「議長、いい加減に進行してくれないか」
「そうね、話を元に戻すわ」ゴスン!
「結局殴られた!? 痛い!」
「そう……私たちが苦難の末に踏破した迷宮。その第5階層・天ノ磐座の上に……更なる迷宮があるというのよ!」
「いや、議長議長」
「何かしらエルキュールくん」
「それ、もうみんな知ってるから」
「ああ、貴方たちってばいらんツッコミが多いわねッ! ここは素直に驚きなさい!」
「な、なんだってー」
「……ごめん、そんな棒読みで驚かれるくらいなら驚かなくてもいいわ。ニーナくん」
「新たなる階層か……フフフ、血が騒ぐ」
「クロフォードくん、発言時は挙手する」
「独り言に挙手は要るまい」
「こういうのはお約束というやつなのよ」
「ならば仕方ないな」
「納得しちゃうの!?」
「フランドールくん、ツッコミの時にも挙手」
「ええ!? なんでそこまで……っていうか、はい! YES!」
「議長……盾で脅すパラディンというのも新機軸ね」
「感心してる場合か! というか私への哀れみは!? しかも新機軸って何が!?」
「はい、3段ツッコミありがとうフランドール」
「お礼はいいから助けて下さいエミリアさん!」
「挙手」
「はい……うう、もうイヤ……」
「もう、打たれ弱いわねぇ……ちょっとはワーグナーを見習いなさいな。ほらほらあの泰然とした姿勢」
「いや議長、あれは単にお腹一杯になってうたた寝してるだけだと思うんだが」
「……所詮は畜生の浅ましさよね」
「さっきと態度が違うー!」
「はい議長、俺もお腹が、空いてきた」
「なんで五七五で!? しかも議題に全然沿ってないし!? っていうか初めての発言がそれなの!?」
「議長、頭数が多過ぎて誰が何喋ってんのかよく分からんわ」
「ひいい文章ならではの悩み! そもそも登場人物が言う事じゃないし! 大体貴方が誰かも分からない!」
「議長、俺もう飯食って寝てえよー」
「そんなのあり!? 私だってそうしたいわ! でもそれじゃペットと変わらないよ!」
「議長、俺たちはもういっその事、そこのマシンガンツッコミのガンナーをメインにしてお笑いユニットとして再出発すべきだと思う」
「なんでや! っていうか私がメインなの!? ギャラは現金でお願いします!」
「えー議長、今のは恐らくガンナーとマシンガンを掛けた洒落よ」
「そんなとこに気付かなくてもいいー! 寧ろ錆び付いたマシンガンよ! 盗んだバイクで走り出すわよ!?」
「フランドールくん……発言時は挙手」
「なんでやねん!」ゴス!「痛い! またシールドスマイトが!?」
「で……詰まるところ、なんの話なのかしら、議長?」
「えーっと……もう面倒だからいきなり採決しちゃうわ。議題に賛成の連中は手を挙げなさい」
「意味分かんねー!? 議長!?」
「議長、ワーグナーは寝てるし、獣だからそれは無理だと思うのだけれど」
「無視していいわ」
「了解、議長」
「では……賛成のもの、挙手! はい!」
「はい」
「はい」
「はい!」
「はい」
「じゃあ残りは反対という事で良いのね?」
「はい」
「はーい」
「はい!」
「はい」
「はい」
「はイーッ!?」
「フランドールくん……変な返事をしない」
「はひ……いや議長、これは一体なんて暗黒会議……」
「5対6で本案は否決されました! ありがとうみんな! では解散!!」
「はーい」
「うむ……」
「よし、それじゃ部屋に戻りましょうか」
「それがいいね〜」
「さ……」
「『さ』? 何よフランドール?」
「最後の最後まで意味不明!」
「それを言っちゃあお終いよ」
「なんでやねん!」ゴス!「痛ッ! 〆までシールドスマイト!? もういいよ!」
「はい、ありがとうございましたー」



スタッフ

原案/製作/配給
W.KOHICHI

出演
ギルド“プロキオン”所属の皆さん
パトリシア(パラディン) 高慢
エルキュール(アルケミスト) 理性的
クロフォード(ブシドー) 好戦的
ニーナ(レンジャー) 温和
ミハイル(メディック) やる気なし
マルガレーテ(ダークハンター) 情緒不安定
クローディア(ドクトルマグス) 獰猛
ワーグナー(ペット) 寝たい
ユキノジョウ(カースメーカー) 変人
ミッシェル(バード) 冷静
エミリア(ソードマン) 良識派
フランドール(ガンナー) ツッコミ

進行/指揮/監督
W.KOHICHI

スペシャルサンクス
W.KOHICHI
and You !

<終>


後書き
 久し振りの創作文、しかもコント的何か。やはりこういうの書いてこそ私だ、という気がなきにしもあらずみたいな。
 情景描写はないですが、入れると寧ろテンポを妨げると判断、敢えて会話文のみにまとめました。聞くところによればこういうモノを嫌う方もおられるらしいですが、今作はこういうスタイルですので御了解下さい。
 まあそれはさておき、『世界樹の迷宮』シリーズは名作ですよ、ええ。こんなにも広がりと奥行きのある世界観はそうそうないのでは。
 でも久し振りにやってみたら、16階の永劫の玄王に全滅させられて私ったらちょっと悲しくもマヌケ。レベル70だからって正面から挑むからです。


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