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トラウマ

文責:W.KOHICHI





バレンタインデー。
それが菓子屋の陰謀であろうともなかろうともどちらでも構わない。
要は、役に立つか立たないか、なのさ。
いろんな意味でな。

そして今、ある公園で一つの劇場が繰り広げられようとしている……。



今、俺は近所の公園に立っている。
1人でではない。
同じ部活の、槙原さんと一緒にだ。
「呼びつけてごめんね、安藤くん」
「い、いや……気にしてないから。大丈夫だよ槙原さん。
 そ、それで、なんの用なのかな」
「え、ええと……ちょっと恥ずかしいんだけど、思い切っちゃうね。
 これを……」
「これ、は」
「私の作ったチョコなんだけど……良かったら……」
「………」
やったァ−ッ! バレンタインデー万歳!
今まで無関心でごめんなさい!
前略オフクロさま、俺にも春が巡ってきたようです! これも地球温暖化の影響なのか!?
「あの、受け取ってほしいな……」
「あ、うん! はい! いただきます!
 ええっと、開けてみていい?」
「いいよ。どうぞ開けてみて」
「じゃあ、お言葉に甘えて」
丁寧なラッピングだなあ……中身が楽しみだぜ。
さぞかし立派なチョコ……チョ……ちょっと……。
「なんだこれーーー!」
そこにあったのは……

見事なポージングを決めた、黒光りするマッチョナイスガイの造型をしたチョコレートフィギュア!!

「ど、どうしたのかな?」
槙原さん……いや、槙原は不思議そうにこっちを見ている。
こんなものを渡して「どうしたのかな?」とはスゲェ度胸だこの女!
「槙原……さん。これは一体……」
「え、頑張って作ったんだよ、力作でしょ?
 マッチョコって名前なの。マッチョなチョコでマッチョコ」
しまった……! この女、顔こそいいが変な女だ!
助けて下さい母者ッ!
「……随分オリジナリティに溢れてるね」
「そう? えへ、誉めてもらって嬉しいな」
誉めてねーよ。
「そ、それで、ね……これからも宜しくね、安藤くん」
「これからは距離を……あ、いや、宜しく……」
了承しちゃったよ……八方美人な自分が憎らしい……。

マッチョコは帰ってから、宵頃、庭に埋葬しましたけど、数日はマッチョの悪夢に魘されました。
今でも庭が汚染されたような心境です。
でも仕方なかったんだよ、ゴミとして出したら機動隊が来そうでさあ!



君はバレンタインデーにロマンを求める方かい?
それともチョコさえもらえればいい方かな?
でも、一挙両得なんて話はないのかもしれないね……。



<終わり>


後書き

久し振りの一次創作! ……がこんなのになっちゃいました。
実は、マッチョなチョコというのは去年もやったんですけど、今年もやってしまいました。ネタとしてはそうなんですけど、『マッチョコ』という響きが面白かったので。
でもこういう事は良くあるんじゃないですかね。マッチョコは行き過ぎとしても、味がまずかったりとか。
あなたも黒くて逞しいマッチョコは如何ですか?


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