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文:W.KOHICHI






場面文章化計画
『神聖モテモテ王国』第3巻第12話
〜独裁者の孤独〜編

(C) ながいけん/小学館





 −−−あらすじ−−−
いつも通り、モテないオンナスキーと死んでも生き返るファーザー。
そんな折、オンナスキーの従兄弟さんが登場して……とまあ、そういう風な?



いつものアパートの一室。
「ふむう、オンナスキー」
いつになく真剣な顔でファーザーが言う。
「昨日の従兄弟さんはどこにお住まいじゃろか? 大学生ですな? 年は?」
それに対して、オンナスキーは動揺を隠せない。隠しもしないが。
親愛な従兄弟のお姉さんに、こんなハレンチな生命体と同居している事がバレるのだけはなんとしてでも避けたかった。
「お前がそんな事知る必要はない。知佳さんの事は忘れろ!
 そっ、それより、僕達のモテモテ王国はどうなったんだ? 早くナンパに行こう。ほら……ジークナオン」
「う……」
一瞬、ファーザーの表情が止まった。が、
「ワワー、よくぞ言ったのじゃよ、キルヒアイスキーくん。わしらは仲間だぜい」
あっさり事は解決した。
「……うん」←不満気
「ジークナオーーーン。
 伸ばしてみたが?」
「……よし、いいぞ最高だ」
「へへ……照れるにゃー」
実に単純である!
「ようし。では早速今日の作戦じゃが……」
従兄弟さんの事など何もなかったかのように話は進む。
つまり、いつも通りなり。
おっと、ファーザーの作戦に入ります。
「独裁者がもてるんじゃよ。じゃってなんでも思い通りになるから。
 それにその高潔な力と孤独は、ナオンがなんとかしたくなるような力と孤独だ」
(独裁者……)
唖然とするオンナスキー。彼もファーザーと長い付き合いだというのに、こういうところは未だ慣れないらしい。
今は従兄弟の知佳さんが絡んでいるからかもしれないが……。
(仕方ない、とにかく知佳さんの事を忘れてくれるならなんでもいい……)
そうだった。



さーて、今回の配役は?
独裁者¥楽総統:ファーザー
山田君スキー:オンナスキー

ファーザーの、ファッションチェーック!
スタイルは凛々しい軍服。
複数箇所に設えられたハートマークがお洒落です。
勿論下半身はパンツ一丁。
なお、オンナスキーの服装はいつも通りの学生服ね。

ではここで、恒例となっております、ファーザーの詞もどきをお楽しみ下さい。
今回のお題は『独裁者マーチ』。

暗い闇切り裂いて
独裁者が出てきたよ?
わしのパワーはどうですか?
(イエイ)
いつか光るぜ赤色灯、でも
光った時は危険だぜ?
『山田君、木久蔵さんのざぶとん
 持っていきなさい』
『はいかしこまりました』
さけべみんなの独裁者
どんな夢でもかなえてくれる
空を自由に飛びたいな
『はい、ヘリコプター』
バババババババ
そういえばこないだ金田正一の
乗ったヘリが墜落した
夢を見た(実話)
死ぬな金田。




町を練り歩くファーザーとオンナスキー。
ファーザーは……なんか飲んでた。
「ふむう……この独裁グラスで飲み干す、下らん飲み物がうまいにゃー」
口端から下らん飲み物が零れてる零れてる。
ちなみに、独裁グラスの正体はただのグラスです。
「独裁者って……何する気だ?」
もっともな疑問を呈するオンナスキー。
内実を伴わなくてもよさそうなものだが、そこら辺がこだわりである。
「ホホホ………独裁者っぽさを演出するにはまず粛清じゃな。独裁には仮想敵が必要である」
左手の扇で口元を隠しながらファーザーが言う。
この扇とは、イメージ的には諸葛亮孔明が持ってるような扇を思い浮かべてください。
何の事やら分からんという人は、各々でイメージしてください。多分それでいいですから。
「山田君、この辺のきらめき男子高生を、
 根絶やしにしなさい」
凄い事を言い出した。
根絶やしという表現もさる事ながら、きらめき男子高生……どんな種族だ。
「バ……バカ言うなお前」
案の定オンナスキーが反対する。そういえば彼も男子高生……だっけか? きらめきかは知らないが。
「はあ? じゃって彼らはもう充分生きたじゃろ?
 分からんのか、男などという醜い罰当たりな良く分からん動く物体は、地球の美観を損ねる。男反対!」
酷い言われようの男(種族名)。
というか、ファーザーというからには彼も男である気がするのだが、この場合彼が真っ先に死ぬのだろうか。
もしくは、実はファーザーは染色体的には女性……失礼、気持ち悪い事をイメージさせてしまい誠に失礼。
まあ、多分「自分は別」と考えているに違いない。邪推かもしれないが、彼の身勝手さはオンナスキーなら良く知っている。
これが論理の二重基準、ダブルスタンダードだ!
「聞け万民よ」
「あっ、こら」
「男は悪しき種なのである、憎むべき突然変異体である。今こそ男を根絶して優良種たる我がナオンが……」
独裁者っぽい演説が始まった。
と、そこへ。
「ム?」
通りすがりのねーちゃんが現れた!
コマンド?
ペタッ、ペタッ←接近(彼は常に裸足)
「ハイル¥楽?」
聞いてどうする。聞かれても。
ファーストコンタクトとしてはかなり下策だ。
「……何こいつ」
引かれた。後ろに一歩。
「わしは人知れず人類を支配する独裁者です。今日まで誰にも知られずに人類を牛耳ってきました」
本人は至って真剣です。恐らく。
「……何よー、こいつー」
「……独裁者」
聞く女性も困るし、聞かれるオンナスキーも困る。
「ムーンポリティカルパワー、メーイクオン。月に代わって統治せん」エイエイオー。
この台詞の間のキテレツな動きを表現しようとしましたが、単にアレな動きにしか見られないので遺憾ながら省略します。
「ホホホ……バカどもに滅ぶ権利をも与えるような民主主義など、愚かしいのじゃよ。
 それよりもこのわしの支配に甘んじては如何?」
「……あんたLでもキメてんの? ヤダヤダ」
キメてるとしたら脳内麻薬だと思うが、彼の場合はドラッグ並みに危険そうな脳内である。
とにかく女性は立ち去ろうとした。当然。
「うお? エルとはエル・カネックですな? はい、分かりました」
分かっちゃったファーさま。分かっちゃったのか……。
「来ないでよ、あたしはドラッグなんかやんないの」
「いいから早くわしと独裁親善を深めてーーー」
逃げる女性に追うファーザー。
「山田君、嬢ちゃんの退路を断っちゃって下さい」
「え?」
「何が『え?』だ山田君」

その時、ファーザーのマントを掴む者が!

「クスリやってるって? お前」
「アー!」
警官が現れた!
「ワワワ、薬って? 宇宙の風邪にもルルが効くのですかーー」
商品名出しおった!
そして警官に連行されるファーザー。
「きみい、わしは無実の一独裁者に過ぎん。速やかに見逃してください。これは命令じゃよ。
 山田さまー。
 山田さまーーー」
引っ立てられるファーザー。オンナスキーも、既にその姿はない。
ご苦労さまでした。



恒例の、アパートでの反省会。(食事付き)
「ええい何故。何故独裁者なのに思い通りにならないんじゃよーー」
「独裁者じゃないから」
総てを言い表わした一言だった。
「ええい、何故独裁者じゃないんじゃよ!」
御愁傷様です。

(とにかく、これで知佳さんの事を忘れてくれそうだ)

オンナスキーの心に平安あれ。



<To be continued ...>

(……嘘。)


後書き

 漫画の勢いを失わないように、漫画の面白さを損なわないように、文章にしてその面白さを伝える事を目的として書きました。
 この場面文章化もシリーズ化を前提に進めていきたいネタ……と、思ってたけど1回目のこれ、漫画の選択間違ったかも……。元の漫画がいろんな意味で凄いから……。台詞でない地の部分での形容に癖をつけて負けないようにしてみましたが、どう映るでしょうか。
 書いてて、結構楽しかったんですけどね。もう少し頑張ってみます、別の作品で。


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