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アルトネリコ2 プレイ記念雑感

文:W.KOHICHI


「女の友情と絆」をテーマとしたRPGと言って差し支えないと思う。
実際、主人公の筈のクロアは割と単純、と言うよりは深みのない人格の持ち主であり、クロアの成長といったものなどはあまり見受けられない。パーティーメンバーであるココナやレグリス隊長やアマリエと同じような扱いだ。
その点、例えば成長の度合いにおいて、ルカとクローシェの存在感は圧倒的。序盤はそれほどではないものの、中盤以降からの人間的成長は目覚ましい。実質的主人公と言っても全く過言ではない。
成長の描写も精密かつ濃密な内容で、興味深く意義深い。窮地に立たされたり極限状況に置かれたりする事はゲームならではだが、そこからの成長の逞しさに結び付ける事の上手さは賞讃されて良いだろう。
極めて率直に言うと、クロアはギャルゲーの主人公である。正確にはこのゲームのギャルゲー面担当のキャラクターである。もうちょっと非道だったりワルだったりしたら、存在感が出たかもしれないのにねえ。クロアくん。

ゲームとしても良く出来ている。ゲームバランスが良く、いろいろな要素が入っていて飽きさせない。単なるRPGという枠には留まっていない。
具体例を挙げればコマンド入力に留まらない戦闘、戦術要素、アイテム開発、レーヴァテイル救出戦、セラピーなどなど。
それも淡々とこなされるのではなく、ボイス付きだったりミニドラマ付きだったり、小憎らしい演出がついている。
ゲームのシステムに慣れる事が容易なのも大きな特色だと思う。特に戸惑わせるモノがなく敷居は低い。戦闘の難易度調整も出来るので、なお慣れるのは易しい。

弱点は特にない……まあ、伏線が多過ぎて謎だらけで混乱する、というのは弱点ではないだろう。また、前作『アルトネリコ』のキャラクターと思しき人物や用語がちらつくものの、そんな謎めいたという程でもなく、気になって仕方のないレベルというわけではない。ただやはり残影はあり、良く言えば前作を購入してみたくなるだろう。
欠点としては、それもかなり重大な欠点としては、戦闘中の処理落ちが痛い。それも敵の攻撃中に処理落ちを起こすため、防御入力のタイミングが合わずに見当違いの入力になってしまう事も多々。
特に画面外にはみ出たエフェクト付きの攻撃は、防御入力のタイミングが極めて合わせづらい。処理落ちと重なればまず対処出来ないという残念な事態に遭う事も多い。
また、ストーリーの進行上、パーティーメンバーの入れ替りが激しいが、後衛のレーヴァテイルはともかく、前衛のキャラクターは性能に殆ど差がない。最終的には5人の前衛キャラクターが加入するのだが、2人しか戦闘に参加出来ない以上、選抜は趣味と有用性で選ぶ事になるだろう。お薦めはクロア、ココナ、レグリス隊長の3名。この3人が使い勝手上位に入ると思う。しかしながら先程も言ったように、前衛のキャラクターは性能差があまりない。極端な話、個性を表わすのは戦闘中のボイスだけと言っても良い。
ちなみに主人公の筈のクロアは戦闘から外す事が可能。外してもなんらペナルティはないが、外すと彼の存在意義というものが口先だけになってしまうという珍事態が発生する。ここまで存在感のない主人公というのも初めてだ。不憫である。

美点としては「プレイヤーの努力が報いられる」という事が挙げられる。やればやる程面白い。そしてそのプレイは大抵は無駄にはならない。
それに、キャラクターが魅力的だ、良い面も悪い面も含めて。鼻に付く個性の持ち主はいない。更に何より、ヒロインが可愛らしい。
強いて言えば、少しばかりストーリーが壮大過ぎるところがあるように思われる。勿論悪い事ではないものの、人疲れしてしまう事がなきにしもあらずである。
まあいろいろ言ったが、良く出来たゲーム。是非とも……と言うには多少人を選ぶように思われるが、お薦めの1本である。


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