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ダービースタリオン プレイ記念雑感

文:W.KOHICHI


1997年製とやや古い。当時としては最新データだったと思われる内容だが、2008年の現在から見ると、流石にその中身に違和感を感じずにはいられない。
レーシングプログラムの古さはまだ良いとしても、馬の年齢制度が現在と異なっているため(現在で「3歳」はゲーム内で「4歳」を指す)、慣れるのには時間がちょっと掛かるだろう。
しかし、「競走馬育成シミュレーション」として見た場合のこのゲームは良く出来ていると言わざるを得ない。面白さは確かなものがある。ゲームとしての質は全く古びていない。

非情のゲームバランスが、このゲームにおける面白さと言えよう。ぬるさがなく徹底して熱い。逆に言えばライトユーザーおいてけぼりのゲームである。
これほど一触して玄人向けという事が分かるゲームも近年稀に見る。兎角思い通りにいかず、馬はどんどん故障したり死んだりする。ある意味で生命讃歌。
現実の競走馬育成もこんな按配ではなかろうか。現場に触れた事がないので断言できかねるのだが、馬の死に様には通じるものがある。

レースに勝とうと思ったら、一から十まで自分で考えなくてはならない。具体的には馬の配合から調教からレース展開から考える事が幾らでも。
そして「強い馬を作る」という事に話が及ぶと、話は底知れなくなる。あまり考えたくないくらいに。勿論無闇に考えてるだけではダメだ。ある程度の知識がないと無駄に考える事になる。
ではどうすればいいのかというと攻略本を買うのが手っ取り早く、かつ、最も堅実な方法である。試行錯誤というプロセスは省かれてしまうものの、データを持ってなお考える事は幾らでもあるし、上手くいくとも限らない。
最近の競馬ゲームは攻略本がなくてもヒントや手順が示されているものも多いが、この『ダビスタ』は1997年製、そんな優しいところなど見せるおおらかさはない。
また、ネットもあてにならない。これ以降も『ダビスタ』はシリーズがどんどん作られているからだ。旧式のゲームは名作と言えど消えゆく定めなのは避けられない。

繰り返すが玄人向けで、ある種のマゾヒスティックな喜悦を提供するゲームと言えよう。ましてや「最強馬生産」などというのは、到底常人のなし得るところではないと断言さえできる。一見、誰でも入れるように見えるゲームであるが、裾野は狭く、敷居は高い。
ただ逆に、それが人気の秘訣となっている点は否定できない。「小癪な面白さ」とでも言おうか、憎み切れない性格を持っているところがあるように見える。
それに「ユーザーを育てる」ゲームである事も言えるかもしれない。思考力が要求されるし、知恵も要る。いろいろ頭を使うゲームではある。

セーブ/ロード時間がやや気になるかも知れないが、こんなものだろう。それよりゲーム途中でロードできないという現実の方が害だ。配合やレース展開の時に試行錯誤するのに、この欠損は邪魔になる。
その他に欠点や弱点は見当たらないが、全体的に不親切な作りが目立つ。とはいえこれは私が最近のゲームに慣れてしまった面があるので、一概にそうとも言い切れないけれど。
とにかく初心者は触れない方が良かろう。触れるにしろ攻略本は必須。ヘビィユーザーでも本があった方が良い。それでも「俺は自力で茨の道を行く!」という人、頑張ってみて下さい。


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