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ファンタジーライフ プレイ記念雑感

文:W.KOHICHI


レベルファイブ社が繰り出してきた、ファンタジー・ロールプレイング……と言っても良いのであろうか、ロールプレイングの一種である事は確かながら、今までにこれと類似するゲームを見た覚えがない。
単純にロールプレイングと言い切る事は難しいかと。とはいえ、では何であるかと問われると、やはりロールプレイングの一種という他にない。
しかしながら本質的な部分はシミュレーションに近いのではないであろうか。育成を楽しむ、という意味においてもそうであるし、イベントを消化する、という意味においても近しいものがある気がしないでもない。

ストーリーは、……なんと言うか、敢えて言うが然程に重要でもない。もっと言うと、世界観を掴むためのアナウンスとも取れなくもない。
ただ、ストーリーを無視してなんでも出来るのかと言うとそのような事は無く、行動範囲を拡げるという意味でもストーリーを進める必要はある。寧ろ最大限に迅速に進めてしまうべきである。
逆に言うなら、世界(行動範囲)を拡げるという意味でストーリーはその意味を持つ。これは一概に不自由な事とも言えないであろう。過度に自由であると、何をすべきか、どうすべきか分からなくなってしまう。その袋小路からの救済策と見れば納得はいく。

では、このゲームは一体何か。誤解を恐れずに言えば、王道的ファンタジー世界におけるライフシミュレーション・ロールプレイングゲーム、と形容出来るのではあるまいか。
この場合の「ライフ」というのは、ゲーム中の用語であるライフ、つまり職業・ジョブを意味もするし、単純に生活を意味もする。即ち、いろいろな事をいろいろな手段で楽しむ事が求められるのである。
簡単に言うと「自由度が高い」。実はこのゲームは一体何が目的であるか、と言うと良く分からないのである。ストーリーは先程述べたように重要ではなく、ライフを極めたり手掛けたりする必要もなく、レベルを上げたり他人と交流したりする事も必須ではない。ないない尽くしである。
やや乱暴な言い方になるのであるが、このゲームの開発スタッフからのメッセージは「好きにやれ」という事であろう。強いて悪く言うと、ユーザーへ問題を丸投げしているのである。
ちなみに、ゲームの自由度を計る事は簡単である。「何をしなくとも良いか」という項目が多ければ多いほど自由度が高い。

さて、このゲームの楽しみ方、という部分であるが、困る事にこのゲームは強制される事がほぼない。とはいえ、それではあまりに困るので取り敢えずライフを楽しむ、という観点から述べていきたい。
12のライフ(職業)の中から適当なものを選び、そのライフにおいて出されるお題(クエストのようなもの)をクリアしていく事、それが大まかなライフの楽しみ方である。ライフは複数のライセンスを持つ事も出来るが、基本的にはライフのランクを上げるためには、そのライフに専念する必要はある。
これが大体の楽しみ方であり、露骨に言えばそれで終わりである。無論、ライフを極めるまでの苦労はあるし、極めるまでの道程も方法もユーザーによってはかなり異なる。更になんのライフを、どれだけのライフを、どのくらい楽しむか、というのも千差万別といえよう。

他にもまあ、各地域住民からの依頼や、ミニゲーム的な生産現場、条件達成によるボーナス支給、などなど、いろいろなイベント・その他が待ち受けている。
身も蓋もなく言ってしまうと、このゲームの自由度は天井知らずでありある意味自暴自棄、ついでに他にやれる事のなくなる最終地点こそあるものの、そこまで達するのにどれだけ時間が掛かる事やらさっぱりである。
この出色モノの自由度を楽しめるなら、その手のユーザーには非常に良いゲームとは言える。その逆のユーザーならとても悪いゲームであるとも言える。まずはこのゲームを手に取るか取らないかの選択からして自由である。もしこの文章を一読して、多少なりとも興味を惹かれたなら幸いではあるが、私は決して強制は出来ないし、強制しなかったという事を覚えておいて頂きたい。


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