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幻想水滸伝 ティアクライス プレイ記念雑感

文:W.KOHICHI


『幻想水滸伝』というシリーズモノらしく見受けられるが、別に作品的なつながりはないと思われる。
特色がない、ように見せ掛けてその実は中々特色のあるロールプレイングゲーム。
「逆ではないのか?」という声もあるとは思うが、一見、特色はないのである。しかし実は特色が強い、そんなゲーム。以下解説。

まずはキャラクターの多さ。仲間サイドだけでも108人出る。マジで。
そのうちメインとなるパーティーの人数は4人。それで兼ね合いが取れるのかという疑問は最も。実際、キャラは無駄に多いような印象があるし、仲間にしたところで出番のないキャラも多々。
ちなみにストーリーを進めればある程度は自動で仲間になるのが半分、仲間にするために条件を満たす事が必要なのが半分といったところだ。

そのキャラクターたちの為なのか、経験値は相対制で、武器防具その他も早い時期からかなり良いモノが手に入る、というか買える。
武器防具その他は本拠地にショップが出来てからが勝負。交易品を流通させる事により、新しい武器が段々開発されていく。
ただ、流通する品が物語が進んでいないと限定されるので、ある程度は物語を進めてやる事が肝要だ。
交易品の取引もどこの拠点が安値でどこの拠点が良い値か考えてやると、あっという間に凄い儲けを出す事が出来る。ちょっとしたミニゲームに近く結構面白い。
ここら辺は現実的であり、安いモノを大量に交易売買するよりも、一気に運べる量が少なくとも高価なモノを運んだ方がいい。
ハマる程の面白さがあるが、あまりやり過ぎるとトレーダーになってしまうので注意。

ビジュアルも綺麗だ。細部に至るまで書き込まれた背景は臨場感を醸し出す。戦闘の際の3Dキャラクターのアクションも割と動きがあり、中々爽快。
アクションに目を惹かれがちだが、上画面でキャラクターが結構喋っている(字幕でだが)ので、そういうメッセージに目をやるのもまた一興。
更に戦闘中は添え物レベルだがボイスも出るぞ。多少進みがスローな面があるが、戦闘面の完成度は高い。

さて、このゲーム一番の特色は、やはり主人公の頭の良さにあるのではないだろうか。
この主人公、口癖は「やってみないとわからない」であり、一見、頭の悪そうなキャラなのだが、咄嗟の頭の回転力には目を見張るものを見せてくれる。
それも、皮肉やら難しい言い回しやらの歪みのある頭の良さではなく、その場の問い掛けに分かりやすく応える事の出来る柔軟な頭脳の持ち主なのだ。
その本質はクレバーと言っていいレベルであり、中々新しい主人公の形を作り出す事に成功しているとさえ言える。実際、こんな主人公初めて見た。
ただ、たまにマヌケもやらかすことがある……のだが、それも主人公がずれた選択肢を選んだ時、即ちプレイヤーの選択によるものなので、実際は主人公というキャラクターに罪はない。
一貫して出てくるキャラクターでもあるので、この知性はより目立つ。

欠点は特にない。弱点としては……キャラクターが多過ぎて、出落ちになってたり、出番が徹底的にない目立たないキャラが多数いる、という事が言えるかも。
また、一時的に物語に絡んでくるキャラクターも、キャラクターの入れ替りが激しく、一貫してストーリーに絡むのは主人公だけと言えてしまう。
それを除けば、目立った弱点はないはず。ストーリーもしっかりしているし、バグもないようだし。

最初に言った通り、一見特色はない。4人パーティーで敵倒してレベルアップして、ストーリーが進んで仲間が増えて……と、普通のロールプレイングに見える。
だがこれだけの特色を備えたゲームであり、奥深さではそこらのゲームには充分匹敵以上の出来を見せてくれている。
誰にでも薦められる良作だと思うが、最初に言った『幻想水滸伝』というシリーズモノからは外れた出来らしく、そのシリーズのファンには強制出来ないかもしれない。だがそれは些末な事であり、ゲームの本質としては中々と言えよう。


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