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狼と香辛料 ボクとホロの一年 プレイ記念雑感

文:W.KOHICHI


うむ、これなら『狼と香辛料』の原作を知らなくとも楽しめるのでは、と思われる程度の出来のゲームだった。
大まかな筋としては、主人公であるところの駆け出しの行商人が契約に基づき、ホロなる謎の女性を今はどことも判らない故郷へと連れていく、といったもの。
その期間はゲーム内で一年。一年の間にホロを故郷へ連れていく事が一応の目的である。
とは言うものの、ホロを故郷に連れていく事が必ずしも目的というわけでもない。このゲームは元々の自由度が高く、行商してお金をひたすら儲ける事もプレイのうちなのだ。
某有名ゲーム風に言えば、「君はホロのために動いても良いし、ホロのために動かなくとも良い」といった具合。

スケール的にはそれ程壮大というわけでもない。寧ろ小粒なゲームの領域に入るだろう。
プレイの期間が限られているし、商売も余程へまをしない限り簡単に成功するし。
特に行商の簡単さはややいただけない。A村でモノを買ってB村で売るだけでそれなりに利益が出る。善くも悪くも頭を使わないで済んでしまう。
たまにどこかの街かで、相場暴騰や相場暴落などが発生するが、それもあんまり意味はない。その街に深く関わっていない限りは。
改善して欲しい点とかも割とある。交渉で手持ちの銀貨数が分からないところとか、街から街まで何日で移動出来るのかとか。

操作は基本的にタッチペンを駆使して行われる。とはいえ面倒な事は何もない。直感的に済むので楽な部類に入るはず。
しかしマニュアル程度はちゃんと読んでおきたい。私は読まないででも問題なかったので強くは言い切れないが。
なお、このゲームには2周目がある。商品知識レベルを引き継いだ状態で始まるので、上手く利用すれば序盤からかなり飛ばせる。
いろいろなプレイの方法があるので、3周目4周目とこなしていけば、多数あるグラフィックやエンディングを埋める事も夢ではない。
あと2周目はメッセージスキップが可能になっているが、体感速度はあまり変わらない気がする。

このゲームは、極論を述べれば、ホロとの旅を楽しむシミュレーション、と理解するのが最も最適であろう。
グラフィックは精緻だし、ホロとのイベントも多め。というかホロを愛でるイベントしか起こらないようなものである。
ちなみにキャラクターにはかなりボイスが割り振られているが、フルボイスというわけではない。だがまあ肝心要のところでは手堅く押さえている印象。
ホロの連れであるところの主人公の描写も特に不自然な点はない。強いて言うなら最初からホロに入れ込み過ぎかなというのはある。
ただその分、ホロ以外の部分は割と力が込められていない。ホロ以外のキャラクターは大体使い回しのグラフィックだし。

原作『狼と香辛料』ファンの方でなくとも一応は楽しめるレベル。しかしファンならより楽しめるか、と言われると多少微妙。
ちなみにこのゲームの主人公は、原作の主人公にあたるロレンスではないので誤解なきよう。
過度の期待はあくまでも禁物ながら、原作持ちのゲームとしては、良い部類に入ると言える。


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