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狼と香辛料 海を渡る風 プレイ記念雑感

文:W.KOHICHI


前作『ボクとホロの一年』から、ぐぐっと原作ファンのために近付き、なおかつ一般ゲーマーのためにも遊びやすくなった一作、それが今作『海を渡る風』である。
主人公は原作でも主人公を務め上げるロレンス。そしてヒロインはホロの他に3人増加。
ゲームのシステム・遊びやすさ・やり込み要素などが大きく改変され、主要メンバーには音声も大幅増。
かなり楽しめるゲームとして大きく容量アップしました。ただしその分ちょっとお値段もアップしました。

主人公が前作の名無しさんから名前を持ったロレンスという存在になる事により、感情移入出来なくなるのではという懸念を覚える方もおられるかもしれない。
だがそれはそれで良いと言えるのではないか。ロレンスの個性はやや曖昧な面があるが、割としっかりしているようである。
寧ろ前作の主人公にも感情移入するのが難しかった上、「どうしてこの人がロレンスじゃないのかしら」という疑問すらあったので、今作でロレンスが主人公になった事は素直に喜べる。
まあ、これは私が原作ファンという事もあるだろうから、こういう見方もあるという風に受け止めてもらえれば良いと思う。

ヒロインが4人という事であるが、メインヒロインともいうべき存在はあくまでもホロ。このゲームではホロに加え、相乗りするサブヒロインを選ぶという形でもう1人を選択する。
つまり、サブヒロイン3人は同時攻略は出来ず、1周回に付き1人攻略という風になる。4人分エンディングを見るには、4周回しなければならない算段だ。
幸いにも1周回あたりのプレイ時間は短く、集中すれば現実時間で3日掛からない。更に2周目以降はプレイボーナスも付く。
ヒロインの好感度はイベントでの選択肢で適切なものを選ぶ事により上がる。狙うヒロインによっては「わざと選択失敗」という事態も考えられる。
とはいえ、イベント発生は基本的にはランダムであり、イベント自体の数も実に多いため、ある程度の慣れが必要になる事は必至。
必ずしも勧めるわけではないが、1周回目は堅実にホロとの2人旅を選んでおいた方が良いのではなかろうか。

一応このゲームは、所謂ギャルゲーの類である。その他の部分が厚みがあって、一見そうは思えないのだが。
その証というべきか、クリア後にCG閲覧やシーン閲覧モードに入る事が出来る。数あるヒロインとの恋愛イベントは全部網羅しているようだ。逆に、これを見ればあとどのくらいイベントがあるのか良く分かる。
そして更に今作から、「実績」という名の、一種の称号がプレイヤーに授けられるようになった。一定の条件を満たす事で入手出来、実績によってはいい事があるらしい。
ただしこのゲームのオプションからは、セーブデータの消去も出来てしまうので、うっかりデータ消去しないようくれぐれも注意を。

操作は基本的にタッチペンで行う。メッセージ送りから商品の売買まで、ほぼ総ての操作をタッチペンを行える。ボタンでも操作出来るが、タッチペンの方がより直接的にプレイ出来る。
前作からタッチペン操作がメインだったが、今作では更にタッチペン操作向きに改変された。全般的にも使いやすくなっている。
タッチペンでの操作は便利ながら、箇所によってはやや不自由するところも。例えば拡大マップ上の小さい点を突くとか。
また前作では出来た、商品の一括扱いも出来なくなっている。これは推測するにうっかりミスで商品を扱ってしまわないようにする配慮なのではとも思われる。

その他の改変点としては……商品に大きさの概念が入ったりした事くらいだろうか。荷台に積み込む際にはちょっと配慮がいるようになった。
最初に述べた通り、全体として遊びやすく、かつ親切な造りになっている。ゲーム冒頭ではチュートリアル的なモノもあるし。
やり込む事を前提としたゲームなのは明白であり、実際に何周回でも遊べる。ただ、先程も言ったように基本はギャルゲーという認識を忘れずに。
原作を知らずとも遊ぶには充分ではある。しかしながら、原作を知っていた方がより楽しめるのは言うまでもないであろう。興味のある方は原作の小説も読んでみる事をお薦めしたい。


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