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ファントム・ブレイブWii プレイ記念雑感

文:W.KOHICHI


開発メーカー・日本一ソフトウェア社お得意の、やり込み系戦術シミュレーションゲーム。
この手のゲームの中ではストーリー重視派だが、スキップが出来てしまうため、見ない人はストーリーをほぼ総て見ない事も可能。
畢竟、残されるのはキャラクターの育成となる。レベルは最高で9999、また、強いキャラクターを生み出すための道も用意されている。

戦術シミュレーションとしては中々の出来。考えなければならないという点に於いて。
独特なシステムを採用しており、マップ上のオブジェクトに仲間キャラクターをコンファイン(降霊)させ、ユニットとして使用可能になる、という形態を採用している。
コンファインさせられるキャラクター数、及びコンファインしたキャラクターの行動回数には制限があり、迂闊にハイペースで飛ばすと後半息切れする、なんて事も。
どのキャラクターをどんなオブジェクトにいつコンファインさせるか、というところから戦術は始まっている。
主人公ユニットのマローネには行動回数制限はないが、彼女一人で戦い抜くというのは無理があるし非効率的。それに育てる楽しみもあるから、仲間は多く持ちたい。

基本的には平易なシステム周りになっている。全体的に分かり易く馴染み易いし、画面も見やすいし。
ちょっと引っ掛かる点としては、バトルパートでの移動に慣れが必要かな、と思う。マス目とかを移動するタイプではなく、移動はアナログ的。
分かり易いシステムであるが、極めようと思ったら、それに応えられる奥深さもちゃんとある。

ストーリーは、あまり愉快とは言えない。率直に言うと寧ろ、見ていて不愉快な域に入る事だろう。
第1話だけ見てみたが、主人公が散々な目に遭っているだけのように見える。それでいて希望を捨てない主人公という像に、感情移入するのは難しい。
第1話以降はスキップしてしまった。このストーリースキップ機能がなければこのゲームを途中で止めていただろう。だって見ていて楽しくもないんだもの。

さて、ここでちょっと話が逸れる事をお許しいただきたい。
ストーリーに付いては第1話の事しか言えないわけだが、個人的意見として、私は「良い人が最後には報われる」という系統の話があまり好きになれない。
勿論報われなければ後味の悪さだけが残る最低のストーリーでしかないのは分かっている。が、美談は滅多にないからこそ美談であり、世の実際はその逆だと思っている。
もう1つ言うと、「あまりに善人」という存在も嫌いだ。本当に心から良い人で、人を信じる人というのは確かにキャラクターになるだろうが、私はお伽話の人物に見えてしまって嫌いだ。
その良い人振りに付け込む連中も当然に嫌いなものの、付け込まれる側の良い人にも「何やってんだこいつは」という思いを禁じ得ない。
人を信じたいけど信じ切る事が出来なくて、それでもいろいろな事に巻き込まれた結果に人を信じる、というストーリーなら支持してもいいが。
もうマローネは世に出ずに、アッシュと2人で穏やかに暮らせば良かったのにと思ってる。それ言ったらゲームにならない事も分かってるけど。

ストーリーを無視すれば、ゲームとしての出来はかなり良い。勿論ストーリーを楽しむのもありだが。
実はこの『ファントム・ブレイブ』、第3版とも言えるバージョンなんだそうだ。以前に、PS2で第1版・第2版が出ているらしい。
PS2版との違いはいろいろあるようだが、システムの根本部分は変わっていないらしい。細かい部分はかなり変更されたらしいし、追加ストーリーがあるのはこのWii版だけ。
弱点・欠点は特にないだろうか。全体的に良く出来ており満足のいく出来だったと言える。
総合的には割と良作である。ストーリーは私には気に喰わなかったが、それはあまりこのゲームの価値を貶めるものでもあるまい。興味があって安いなら手を出してみてもいいかも。


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