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ロマンシング サ・ガ プレイ記念雑感

文:W.KOHICHI


1991年頃にスクウェア社(当時)から製作・発売された、スーパーファミコンをプラットフォームとするロールプレイングゲーム。
人は、このゲームを称して「名作」「迷作」「クソゲー」とか言ったりするらしい。面倒な事にどの評価も至極真っ当だから困る。
「名作」と「クソゲー」が両立するのか? という向きもあるかと思われるが、実はこの2つの両立は珍しい事ではない。だからこそ「迷作」という評価が出てくるのである。

ゲームの筋書きとしては、世界を救うタイプの、王道とも言える道筋を辿る。8人の境遇が違う主人公から1人を選びプレイ開始、いろんなイベントをこなしながら邪神を封印するために頑張る、というもの。
今でこそ、この「主人公を選択できる」というシステムは目新しくもないが、このシステムの開祖はおそらくこのゲームではあるまいか。
ゲームの自由度が高いのも、当時としては斬新な特徴であったらしい。「次にやるべきイベントが分からない(フラグが立っていない、といった意味ではなくて)」という、ある意味でユーザー置いてけぼりの容赦ないシステムの自由度である。
その気であるなら、キャラクターによってはイベントらしいイベントを何一つこなさずに最終決戦に挑む事も可能。ゲーム性を良くも悪くも無視する事が出来るのである。
さらに、発売当時はまだ主流ではなかった「レベル制・経験値制の不採用」も大きな特徴。代わりに採用されているのが「熟練制」である。戦闘に勝利した際にパラメータがなんらかの法則に従って上昇する事もある、ようになっている。
「熟練制」とは多少異なるが、同じ敵シンボルから出現する敵が接触のたびに異なり、最終的には強大な敵が現れる。ここら辺も普通のゲームとは違う特徴である。

さて、ここまでは人によって賛否両論あるであろうが、まだ褒められた部類の話である。これから褒められたものではない部類の話に入る事になる。
このゲームの開発陣が意図しなかったであろう特徴として、不具合が多い事が挙げられる。これは単純なうっかりバグとかいう段階の話ではない。寧ろプログラムの大失敗の類ではないか。
例を挙げると、アイテム増殖・キャラクター増殖・セーブ&ロードを利用したあり得ない移動・術法による詰み、などなど。解析してみるとその数は非常に多く、一例を挙げるのにも苦労する程。
また、セーブデータが吹っ飛んだりするトリガー、ゲームバランスの明らかな異様さ、意味不明なパラメータやイベント数値……このゲームが「不完全」「未完成」と人に思わせるのもむべなるかな、であろう。
通常のプレイ範囲ではそうそうこれらバグにお目に掛からない……と言いたいところだが、示された手順に従ってバグが発生する行動を取ったらば、簡単にバグが発生したのはショックであった。
開発陣は或いはここまで意図していたのかもしれない。その証にスクウェア社(当時)ことスクウェア・エニックス社はこのゲームを下る事14年後、プレイステーション2でこのゲームのリメイク版を出している。
流石にリメイク版は安定したシステムで安心できる作りになっているものの、リメイク版を出す事自体がこのゲームに対する反省がないのでは、との疑念も抱かせる。

プレイしていて面白い事は面白い。エンターテイメント性は確かなのだ。ただゲームバランス的に命綱なしの綱渡り的なだけで。
悪い意味でハラハラしながらゲームをプレイする事を強いられる。こまめなセーブは絶対に欠かせないし、詰まった時のバックアップのために3つあるセーブ領域をフル活用する必要もある。
故に決してライトユーザー・普通のユーザーにはお勧め出来かねるゲームである。記念碑的ゲームであり手にする価値はあるとは思われるのだが、強要も出来ないし。


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