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ポケットサッカーリーグ カルチョビット プレイ記念雑感

文:W.KOHICHI


公称ジャンルは「サッカークラブ育成」、しかしてその実は言うなれば「サッカークラブ監督シミュレーション」とでも言うべきゲーム、それがこの『カルチョビット』である。
繰り返すが、サッカーをプレイするゲームではない。サッカー選手を導くゲーム、と形容すれば最もその実像に迫る事が出来るかと思われる。
まず先頭のこの一文で注意しておかないと、「サッカーのゲーム」=「サッカーをプレイ出来るゲーム」と勘違いする輩がいるかもしれないのであって。
とはいえ、そういった粗忽者もいないとは言い切れまい。そのジャンル自体、とても珍しいゲームであるからして。

ゲームの目的はクラブを大きくして上へとのし上がる事、といってほぼ間違いない。そのための手段をいろいろ考えるのがプレイヤーのお役目である。
具体的には、選手の獲得や選手の育成、試合でのフォーメーションの決定や選手交代の指示、兎に角クラブに養分を与える事が仕事となる。
逆に言うとそれ以外に出来る事はこれといってない。肝心要のサッカーの試合はオートで進行する。大事な事なのでもう一度言う、試合はオートで進行する。
つまり、プレイヤーは基本、試合は指をくわえて見ている事しか出来ない。そういう意味でもこの上なく監督の気分を味わえるというものである。

さて、このゲームの何が面白いかを述べねば、レビューとしての体をなさないというものであるが……かといって、このゲームの面白さを言語化する事にやや躊躇いを覚える。
上記の事を踏まえて言うならば、このゲームの面白さは一にも二にも一種の不自由さを味わう事にあるのではないであろうか。
確かに育成の面白さ、鍛え上げた選手の強さに酔う楽しさ、というものもあるとは思う。しかしそれらを含めた総ては、もどかしさの向こうにあるのではあるまいか。
極端な意見である事を承知で言うが、シミュレーション本来の面白さというものがここにあると思われる。ただ、本当の意味でのシミュレーションという事になってしまうのであるが。

弱点と言える程の存在はないと思われる。完成度は高いし、目立つバグらしき現象も発見されていない。
ただし、このゲームほど遊ぶ人を選別するゲームも滅多にないのではないか。何しろ、「遊んでいる」という感覚に乏しい。良く言えば硬派、悪く言えば硬直的である。
グラフィックもあまり先鋭的とは思えない、というよりは古典的であり、これが新鋭のハードウェアでのゲーム、という感じすらあまりしない。
しかしながら、これほどにゲームらしいゲームもそうはないのではないであろうか。寧ろ、これこそをゲームと呼ばねばなるまい。それほどゲーム的なゲームである。
なお、余談ではあるがこのゲーム、製作者が、かの『ダービースタリオン』などを作った人であるらしい。だからどうしたという事もないのであるが、一応警戒すべきであろう。
何を警戒するのか? 無論、このゲームが『ダービースタリオン』などに匹敵するくらい奥深いゲームかもしれない事を、である。


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