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電波人間のRPG プレイ記念雑感

文:W.KOHICHI


ジニアス・ソノリティ社謹製の、まあまあオーソドックスなロールプレイングゲーム。
基礎部分は至極順当な出来とも言えるが、根本部分は中々面白いシステムを採用している。
3DSダウンロードソフトウェアでは、実は何気に初となる本格的RPGである。

ストーリーはとても古典的というか、言い換えれば王道的である。魔王にさらわれたいい人を助けるために主人公が戦いの旅に出る、という筋書き。
その他にも、まあいろいろとネタ要素を含んでいる。ただし決してパロディ的なものを含んではいない。
なお、所謂「強くてニューゲーム」はないが、「クリア後の世界」は用意されている。

ロールプレイングゲーム部分も至極真っ当。敵との遭遇はシンボルエンカウント方式、経験値制は絶対式、レベルは99まで。
キャラクターによっては、特技を習得したり、レベルアップで更に特技を強化したり出来る。
キャラクターのパラメータは攻撃・防御・素早さ・回避などのものと、各属性への耐性がある。

さて、ここまでを紹介する限りでは極尋常なロールプレイングゲームであるが、ここからが変わっているところとなる。
このゲームのキャラクター、つまり戦闘メンバーとなる仲間は、現実世界における「電波」から獲得するのである。
そう、人間の目には見えないが、空中を無尽に飛び交うあの「電波」である。このゲームは、その電波からキャラクターを生成するのである。
具体的には、3DSの外部カメラから(?)電波をキャッチし、キャラクターが生成される。ちなみに決してランダムに生成されるわけではなく、一定の電波からは一定のキャラクターが生成されるようになっており、殆ど無尽蔵のパターンのキャラクターが存在する。
このゲームを試して分かる事は、電波というものが如何に膨大で無尽に駆け巡っているか、そういう事も実感させられる。
それはさておき、街中をぶらぶらして適当に周りを調べるだけでも、結構な種類と数のキャラクターが生成可能である。いろいろ散策しながら電波をキャッチするもまた一興であろう。
ただし、傍から見るとカメラでその辺を撮影しまくっている、と見られてしまう危険性がある事を念頭に置いておいてほしい。なお、一応3DSのカメラ画像にマスクを掛ける機能もある。
不審がられない場所(コンビニやファストフード店など)で、節度を守りながら、電波キャッチを楽しみたいものである。

単純なロールプレイングゲームとして捉えても、中々、を通り越して良い出来であろう。
レベルアップの楽しみや、ダンジョン攻略の楽しみなど、やり方・楽しみ方は様々であろうが、個人的には敵からのアイテムドロップを狙ったバトルが面白いと思われる。
このゲームのアイテムは大体3種類に分別出来る。アイテム・装備品・服である。このうち、ショップで扱っているモノは一部に過ぎず、大抵の良いモノは敵からゲットするしかない。そこでドロップを狙ったマラソンが只管続く、というわけである。
1匹の敵が落とすアイテムは通常2種類あり、ドロップ率もそれぞれ異なる。倒しづらい敵もいれば、中々現れない敵もいる。そこを乗り越えてアイテムをゲットしてこそ勇者であろう。
一応断っておくが、このアイテムドロップマラソンは必須というわけではない。クリアには必ずしも関連しない、という事もまた確かである。
余談であるが、一部のキャラクターの特技には、敵からのアイテムに関するものがあるらしい。詳細は秘密にしておくものであるが。

弱点というか、面倒なところとして、「一定の電波からは一定のキャラクターが生成される」という点は、面白いと同時に厄介な箇所でもある。
プレイヤーは、基本的にはキャラクターを選ぶ事が出来ない。厳密に言うと、自分の好みに適合したキャラクターを作る事が出来ない、と言うべきか。
だから、ある程度は妥協を余儀なくされる。幸い、それで先に進めなくなる、とか、先へ進む事が苦しくなる、といった事はないのであるが。
尤も、攻略サイトには、力自慢・特技自慢・属性自慢のキャラクターがわんさかと載ってはいる。のであるが、それらに安易に頼り切る、というのもどうであろうか。
ライトユーザーなら兎も角も、勇者ならば自力で道を切り開きたいものである。別段、強制するものではないし、強制出来るものでもないのであるが……。
それはさておき、その他の部分に弱点はない。強いて言うなら、バージョンによってはバグが残っている事が欠点か。しかしこれは、アップデートすれば問題のない事であるし。
800ポイントクラスのソフトウェアとしてはかなりの出来と見る。余裕があったならば、試してみるもまた一興。


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