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少女義経伝 プレイ記念雑感

文:W.KOHICHI


一種のパラレルストーリー的歴史物ゲーム。ジャンルは戦術+恋愛シミュレーション。
簡単にストーリーを説明すると、現代に生きる高校生がタイムスリップさせられた挙げ句、たまたま源義経が実は女性だった、という事を知り、そのまま巻き込まれて武蔵坊弁慶となり平安末期・鎌倉時代初頭の戦乱に巻き込まれていくというモノ。王道的である。良く言えば。
戦術シミュレーション部分・バトル部分はかなり簡潔に作られており、一種の垢抜けなさを感じる事もしばしば。
ただ、キャラクターは広い範囲の嗜好に対応している。絵が好きになれるかという前提条件さえあるが。

難易度はかなり易しいくせに、矢鱈とストーリーが長編なのが引っ掛かる。
シミュレーションではあるのだが、1手や2手間違えても簡単に挽回できる(致命的な間違いでない限り)。これは戦術パートのみならず、キャラクター攻略においても同じ事が言える。
バトルにしろ、正攻法で進めていけばザコ戦だろうとボス戦だろうとまず負けない、というか負けない。レベルもパラメータも有り余るくらいに上がる。
それでいて8時間以上プレイしても(メッセージスキップしてもだ!)終わりが見えない、というのは一種の苦痛を伴うであろう。

ストーリーは悪くはない……のだが、明らかに無理があるぞ。キャラクターが設定を抜きに見ても、パッと見、女の子にしか見えないというのは……。
それはまあ、男にしか見えないヒロインというのも無理があるというのは頭では分かっているが、どう見ても男装しているようには見えない。声も女性的だし。
時代設定にも明らかに無理があるし。例としては「メニュー」って単語を平安・鎌倉人が使うのはおかしいだろ、というか、「献立」って単語を知らんのか開発陣。
また、ストーリー途中で一旦現代に引き返すシーンがあるのだが、そこの描写、というか歴史が改変されているのに弁慶の像が建っているというのがおかしい。負け組(ストーリー中の話)の歴史などがクローズアップされるのは日本ではあり得なくもないが、敵前逃亡で敗戦のきっかけになった人物(ストーリー中の話)が銅像になるだろうか。そうは思えない。
一番馴染めない点は、戦乱の時代だというのに、そこに現代の高校生がすんなり溶け込んでしまう事だろう。ゲームだからってプレイヤーをバカにした話だ。それに、血の臭いがしない。人を殺すという事が、どうしても見えない。そういう過激な描写を入れろとは言わないが、そこを拡げる事で映せるものというのがあるはずだったのに。
詰めが甘くはないのだが、違和感はどうしても防げなかった。荒唐無稽という言葉が、残念ながら当て嵌まってしまう。

良い点としては、キャラクターの個性が良く確立されているところか。敵味方共にしっかりしている。
仲間が見目麗しい少女ばかりで敵がむさい男連中ばかりというのには目を瞑ってもいいだろう。そうでなければゲームとして成立しないだろうから。流石にそこまでハードルを高くしてくれなくとも良い。
それにちゃんと歴史解説のフォローも入れているし、歴史の勉強にもなるかもしれない。
歴史解説はラジオドラマ風でちょっと楽しめるようになっている。

うーむ、全体的な評価としては今一つとしか言えないかなあ。悪くはないのだが……。
垢抜けないとか、ちょっとダサいとか、そういった面が目に付いてしまう。
それは強いて置いておいても、ゲームだからと割り切るには少し無理があるところが多々。もう少し洗練できなかったか。
お薦めは出来かねる、良くも悪くも一流に届かないゲーム。ただ、絵師の人のファンなら買いかもしれない。


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