戻る


偽りの輪舞曲 プレイ記念雑感

文:W.KOHICHI


その革新的にして特異な戦闘関連システムが逆に最大の仇となってしまった、(製作メーカーにとってもユーザーにとっても)悲劇的なゲームである。
これ程「惜しい」ゲームはそうお目にかかれたものではあるまい。
では、このゲームの悪いところ、不満なところから述べさせてもらおう。そうする事によって面白そうなところが活かし切れていない悲劇が浮き彫りになるからである。

まず、「敵ユニットの上を通過する事によって攻撃を実行する」というシステム。着眼点は悪くはなかったが、このシステムは結果的にゲームの難易度を跳ね上げる一因になった。
それまでのゲームにあった「前衛・後衛」という「布陣」がこれによって意味を喪失し、総てのユニットが乱戦状態になってしまった。
頑丈なユニットならまだしも、打たれ弱いユニットにこれはきつい。敵が機動性の高いユニットだったりすると散々に引っ掻き回される。
おまけにこのゲームには、基本的に反撃というものがないに等しい。敵味方ともにフェイズごとにやりたい放題である。多くのマップでは敵の方が数が多いので、敵の方がやりたい放題しているという印象が非常に強い。

次に敵味方の交戦結果処理。かなり時間が掛かるがボタン一つでスキップできる。が、これもまたゲームの印象を悪くする一因。
スキップさせた場合、どのユニットにどれだけダメージを与えたか、どこで反撃されたか、どのユニットに移動阻止されたか、等の重要な情報が諸共スキップされてしまう。
かといってスキップさせずに一々交戦画面を眺めるのは極めて面倒。演出が長い上に効果も分かりづらいときている。言い換えるとスキップしたくなるような演出になってしまっている。
特に敵の行動時には雲霞のごとき敵が一気に敵軍の上を通過するので演出が非常に長くなりスキップせずにはやっていられない。この際、敵の軌道を見失う事が多い。どう動いたのか分からないのである。

細かい不満としては、こちらに引き込めそうな有名ユニット(名前があるユニットという意味)も、進行上殺す事を余儀なくされる事がある。こちらとしては見逃してやりたいのだが進行ルート上に陣取ってしまうためその上を通過せざるを得ないのだ。しかも「倒す=殺す」なので取り返しがつかない。
目立ち度具合を表わすLCポイントもあまり意味があるとは思えなかった。このゲームのCPUの思考は実に堅実であり、きっちり弱いユニットを狙ってくる。
腹の立つ事としては、こちらは試行錯誤で戦いに挑戦せざるを得ないのに、敵は100%このゲームの戦闘関連システムを活用して迫ってくるところが挙げられる。そこそこ賢いCPU、と言えるレベルなのだ。それが腹が立つ。

さあて、ではこのゲームの良いところを述べてみるとしようか。
逆説的に聞こえるだろうが、戦術シミュレーションとしては割と面白いレベルなのだ。ただ非常に難しく見づらい、という点に目を瞑れば。
キャラクターも大体は魅力的。こんな短期間しかプレイしていないのにその魅力はびしびし伝わってくる。またストーリーとキャラクターが上手く同調しており、矛盾やおかしなところがないのも良い。
スキルポイントの割り振りで自在にキャラクターを強化できるのも楽しい。これにより戦術・戦略に幅ができる。強化と言うよりはカスタマイズだろうか。
そして忘れてはならないのが“パシリシステム”。戦闘に不参加のユニットを活用する、非常に面白く斬新なシステムである。頑張らせれば2軍から1軍へ昇格も夢ではない……か? 買い出し専門ユニットを作るのも良いし。クエストしかやらせないというのもまた一興。キャラクターの個性確立にも一役買う、まさに革新的なシステムである。

ああ……このゲームが『ファイアーエムブレム』のような戦闘関連システムだったらなあ! と思わざるを得ない。二番煎じの没個性、と言われようとも。
この試行は失敗に終わってしまった、と断じる事ができてしまう。惜しい。本当に心から惜しい。
だが、ある意味ではプレイしたユーザーに鮮烈な記憶を植え付ける事に成功したゲームではある。
我々の脳裏を閃光となって通り過ぎたこのゲームは、いろいろな意味で語り継がれるゲームになった事だろう……。


戻る