戻る


三國志11with パワーアップキット プレイ記念雑感

文:W.KOHICHI


『信長の野望』と並ぶコーエーの定番シミュレーションシリーズ『三國志』。実は私はこのシリーズを買うのはこれが初めてである。
慣れないシリーズ、というのも理由の一つだが、更にその上にはそういうモノのために高いお金を払う事に抵抗があったからだ。
そう、このゲーム、と言うよりもコーエーのシミュレーションの定価は高い。このゲームでも定価より割引されてなお9055円(税込み)なのだ。ちなみに2007年現在における新作ゲームの一般的な値段は6100円前後(税込み)程度である。中古ならモノにもよるが2000〜3000円くらい(税込み)だ。このゲームが高めな事が分かってもらえると思う。

さて、値段に相応してその分中身もクオリティが高いのか? その答えは取り敢えずイエスである。たくさんのデータを詰め込まれ、いろいろなスタイルでのプレイを可能とする、綿密に作りこまれたシミュレーションである。
先に言ったように、私は『三國志』シリーズをやった事がなかった。この『11』が初めてのプレイとなったわけだが、その割にゲームに溶け込む事に全く苦労はしなかったと言っていい。慣れるのには多少の時間を必要としたが、『11』は私が今までプレイしたコーエーのシミュレーションとはかなり違うシステムだったにも拘らず、極当たり前のように抵抗なくプレイする事ができた。直感的と言えばいいのか、垣根が低いと言えるのではないだろうか。
とはいえ、全くゼロの状態からすんなり溶け込めるのか、と言われれば疑問が残る。私はシミュレーションが大好きで戦術・戦略・育成・恋愛・RPGととにかくたくさんやった。その中にはこの『11』と一部が類似しているモノもあり、それらの経験を元にしてこのゲームに馴染んだ、という事も否めない。
しかしそんなに難しいシステムや設計であるとは思えないのも事実。人にもよるのは承知だが、特に苦労する事はないのでは?
溶け込みやすさに一役買っていると思われるのがチュートリアル。愉快な劉備が生徒役になりとても分かりやすくゲームの解説をしてくれる。大変に愉快なので一度はやってみる価値がある。

シミュレーションの面白さはきっちり押さえてある。コーエーの戦略シミュレーションゲームは根幹部分に「内政」「軍事」「その他」の3つの柱があり、これを堅く守り変えないところがある。マンネリにもつながりかねないのだが、不思議とこれが飽きられないのか、根幹部分はこの『11』に至っても変えられていない。
実際、これが面白い。一応、ゲームの目的は全国統一である。しかし、今までのコーエーのゲームの感想を(本などで)見ると、多くのプレイヤーが目的と手段を取り替えてしまっているのが確認されている。それは例えば「富国強兵」であったり「人材育成」であったりするが、本来手段であるはずのそれは、魅力的な目的と化す事があるのである。
そういうものが、このゲームにはたくさん用意されている。私がやったのは人材集め程度であるが、例えば全都市の全武器の在庫を100000にしてみるとか、使えない人材を育成して一線で活躍させるとか、戦場に200000人出すとか、楽しみ方は豊富にある。こうして言葉にすると、別に大した事のない様に見えてしまうのは割り引いて考えてもらいたい。やっている最中は物凄い楽しさがあるのだ。

大きな一枚マップを採用しており、東西南北くまなく地続き。箱庭的な感がある。
これにより、大陸の広大さ、現実的な機動性の演出に成功している。
ただしとても広いという事は一種の疲れを生み出す要因にもなっている。とはいえ、その疲れを感じたならこのゲームに疲れてきている証拠だろう。普通にやっていればそういう事はまず感じないはずだ。
また、これは欠点と言えると思うのだが、シームレスな統合は多発的な自体に対処しにくい。例えば3箇所で戦闘が起こっても、同時に処理されてしまうため、何が起こったのかは結果を見て判断するしかない。
ここはもっと掘り下げて言うと、一番困るのが戦闘の時である。1箇所だけで戦闘しているなら問題ないが、2箇所になるともうダメだ、完全に把握する事ができない。起こった事のメッセージバックログ機能もあるが、兵数の損害や炎上に付いて何も示してくれない。ここを改変するとスタイルが根本から崩れる可能性もあるし、こういう風にできている、として我慢するしかないのだ。次回作ではなんとかしなくてはならないところであろう。

さて、Wiiオリジナルの要素、必殺アクションモード。一騎討ちの時にのみ出てくる。タイミングを合わせてリモコンを振ったりポイントシュートする事で条件を満たせば、通常よりも大きなダメージを与えるクリティカルが発生するというもの。
これも結構楽しい。ミニゲーム的な面白さがある。失敗しても通常ダメージになるだけなので気楽だ。ここで頑張らないと勝てない相手なら、そもそも挑む事自体が無茶だったのだ。
オプションでモードの有無を切り替えられるので、鬱陶しい場合も安心。でもやった方が楽しいと思う。
通常操作もWiiの場合は、リモコンとヌンチャク(またはクラシックコントローラ)を使ってやるが、操作は慣れやすくどうという事はないはず。私もすぐに馴染んだ。
リモコンの光の受信角度が広いので、仰向けに寝転がっていても支障なくプレイできる事を確認している。

もう一度繰り返すが、このゲームはお高い。値段的に。それに、コーエーのこれまでの販売スタイルを鑑みて、いずれ(いつになるかは分からないが)廉価版を出してくる可能性は否定できない。
だから、今買えというような事は言えないし、お薦めする次第でもない。ただ、私は発売直後に定価近くで購入して良かったと思っている。
なんだかんだ言って、Wiiでしっかり遊べる骨太のゲームである事は間違いあるまい。Wiiで他にめぼしいゲームのない現状においては、頼りになるゲームなのではないだろうか。


戻る