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シアトリズム ファイナルファンタジー プレイ記念雑感

文:W.KOHICHI


スクウェア・エニックスから発売された、ファイナルファンタジーシリーズの異端作。
公称ジャンルは、シアターリズムアクション・ゲームとなっている。つまるところ、サウンド系ゲームである。
あのスクウェア・エニックスがこういったゲームを出す事自体面白いというか、兎に角メーカー的に斬新な試みであろう。

この作品を大まかに説明すると、今までに製作された総てのFFシリーズから主要な・優れたBGMを選り抜き、それを元にサウンドゲームを作ったものである。
元々FFはBGMの評価が高かったようであり、その意味では今作の登場は意外ではあったものの、寧ろ納得出来る選択であった。
登場するのは主要なBGMだけではなく、歴代キャラクターも敵味方問わず数多く登場する。まさにお祭りゲームとも言えよう。
ただし、キャラデザインがかなり今までのFFと異なる、というか寧ろこれもまた異端であり、パッと見、誰が誰なのか分からない面も無きにしも非ず、である。
もう1つ言うなら、ゲームステージの背景も歴代の主要どころを押さえており、元ネタを知っているならば、ちょっとステキな気分になれるであろう。

総ての操作、及び入力をタッチペンで実行するタイプのゲーム。ボタンは全く使う必要がないし、その事によるストレスもないように設計されている。
ゲーム部分の操作を大雑把に解説すると、ゲーム部分は、流れてくるマークに合わせて下画面をタッチ・スライド・ホールドしてスコアを叩き出す。
ゲームモードはフィールド、バトル、イベントの3つがある。最終的にやる事は一緒であるが、入力感覚がそれぞれ割と異なるため慣れるのはやや面倒か。

FFとはそもそもロールプレイング。という事で今作にもそれっぽさがきっちりと導入されている。最もそれっぽいのはやはりバトルステージ。次から次へと現れる敵を倒していく場面である。
バトルステージの敵はただの演出ではなく、倒す事によりキャラクターに経験値が入ったり、アイテムが手に入ったりとそれなりの特典が付く。
しかし敵を倒すには、ゲームで良いスコアを出す事だけではなく、キャラクターを育ててレベルを上げパラメータを強化して、つまりはキャラクターが強くないとならない。
キャラクターが強くなると、フィールドステージでもバトルステージでもプレイヤーに有利に働く傾向がある。ただしゲーム自体の難易度には影響しない。
特に、ある程度の難易度を誇る曲には強力な敵が出てくるため、こちらもキャラクターを育てていないとまるで倒せないという事もしばしば。そういう意味ではロールプレイングである。

シリーズでお馴染みの通貨単位・ギルは今回出てこない。代わりにリズポというポイントのようなものが導入されている。
リズポは大体、ステージをクリアすれば適当に入手出来る。クリア評価やパーティー編成などで多少の誤差は出るが、まあ良い成績を残せば高いリズポが得れる。
リズポを集めるといろいろな隠し要素が開放されたりする。集めて損は全くないので積極的に得たい。ただしある程度集めると唐突にラストバトルが始まるため注意。

ゲームのコツとしては、始めは兎も角も慣れたらば積極的に高い難易度に挑戦する事であろう。いつまでも低めの難易度で頑張っても報われないのである。
特に、カオス神殿の闇の楽譜は全くもって手加減はしてくれない。やり易くする手段が、こちらを高める意外にない。
闇の楽譜はクリアする事によりいろいろなモノ、特にクリスタルの欠片が手に入るため、手早く世界を広げるにはどうしてもクリアしておきたい。
更に言うと、すれ違い通信を実行するためにも、闇の楽譜の最初の一枚をクリアせねばどうにも始まらないのである。どんなに苦しくても、最初の一枚だけは根性を発揮しておかねばならない。
必ずしもカオス神殿に挑戦する必要性はないものの、カオス神殿の闇の楽譜はこのゲームの面白さのかなりの部分を占めるため、興味半分でもいいから挑戦してみると吉。

弱点・欠点はこれといって見当たらないか。強いて言えば、挑戦出来る曲内容に偏りがあり、予想していた曲がない、という事態が多かろうという点が挙げれる。
収録されている曲数自体は割と多いようなのであるが、当初用意されている曲は過去1シリーズにつき3曲。13シリーズ存在するから、3×13で39曲しかない。これ以外は自力で発見するしかない。
元々、総ての曲を網羅出来ているはずもなく、一部の曲は有料ダウンロードという形で配信されるようである。曲を見付けるのに苦労するのと、どちらが良心的であろうか。
それを除外すれば、サウンド系ゲームとしての完成度は実に高い。もう一度言うが、今作はサウンド系ゲームである。アクションゲームではない。そういう面を持つ事を否定はしないが、あくまで主体はサウンドである。
このゲームをアクション系と見るかサウンド系と見るかでゲームそのもののやり方が変わってくるのである。どんなにデタラメに下画面のマークが流れても、実はある程度はBGMに付随してマークは流れてくるのである。
であるからして、アクションの腕前もあるに越した事はないものの、もっと有用なのは結局リズム感なのである。そういう意味で、今作のサウンド系ゲームとしての完成度は実に高い。
FFシリーズが好き、そのBGMが好き、という向きにはお薦め出来る。サウンド系が好きという人にもまた良し。


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